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中小企業の退職金制度
 





  退職金の考え方がここ数年で変わってきています。
2012年に適格退職年金制度が廃止される直前より、退職金制度を見直す企業が大幅に増えました。

退職金は、設計によっては企業経営を大きく左右するものになります。
特に、バブルの時代に比較的手厚い退職金制度を制定して、運用している企業は要注意です。
長期的に見れば、経営を圧迫するものにもなりかねません。
ここで再度、適切な退職金の考え方について考えて見ます。


1.適格退職年金制度の廃止について
 
適格退職年金制度は1956年(昭和37年)に作られたもので、その掛金が会計上損金に算入出来るという優遇措置が取られていた為、節税の意味も含めて特に中小企業においては多く利用されていました。

しかし、2002年に確定給付企業年金法が施行されたことにより、現在適格退職年金制度に加入している企業は2012年3月までにそれを解約して、別の制度に移行する必要に迫られました。
 

2.廃止後の企業の選択肢について

では、今後退職金に関してどのような選択肢があるかを考えてみましょう。

①退職金制度の廃止

退職金自体は廃止してその代わりに、毎月の給与に想定される退職金見合い金額を上乗せする方法があります。
既に一部上場企業を中心に導入している企業もあり、経営側としては会計上もすっきりしたものになり、社員も給与の月額が増加するなどメリットも多いしくみです。

しかし、この選択をした場合、そもそも給与月額が大幅に増加するために、社会保険・労働保険の負担が企業・社員側とも増加することになり、さらに所得税額等も増加するといった難点もあります。
   
②確定拠出型年金の導入

適格退職年金制度を始めとして、従来、日本の退職金は退職後の支給額を確約する「確定給付型」年金であったのですが、後述の通り、運用利回りの実態が予定されていた利回りよりも下回っているケースが殆どです。

しかし、支給額を約束した会社は当然、退職した社員には決められた退職金を支給しなければならないため、会社の退職負債が大きくなるため、既に欧米等では一般化している確定拠出年金が日本でも、導入されることになりました。

従来の確定給付型の適格退職年金は、生命保険会社等が販売、運用しているケースが多いのですが、多くは5%前後の予定利率のまま今日まで来ており、その実態は予定より下回っている場合が殆どですので、いわゆる「積み立て不足」に陥っている企業も多数あります。
これが、退職金が経営を大きく圧迫する要素の一つです。

その点、確定拠出型は給付額を決めるのではなく、掛金を決めて運用し、運用成績によって支給額が決定されるというのが基本的な考え方です。
確定拠出型には大きく言って、下記の2つのものがあります。

企業が決められた規約に基づいて掛金を支払いますが、運用は、社員が自己責任で金融商品を選択するものです。よく日本版401Kと言われます。
生命保険会社等の金融機関が販売・運用しています。

しかし、例えば従来、全く金融商品には興味もなく、自らの意思で資産運用をしたことがない社員にいきなり金融商品の選択を迫ることが現実的なのか不透明とも言えます。
また、この制度は現在の定年年齢である60歳までは現金化できないことがデメリットです。

一方、掛金を企業が支払うのは同等ですが金融商品が社員が選択できない制度もあります。
これは中小企業退職金共済制度(以降、「中退共」と略します。)という制度を活用したものです。

従来の適格退職年金制度からの積立金を移管出来る制度ですので、非常に使いやすく、中小企業には適した制度と言えます。また、資産運用はその制度を運営する「勤労者退職金共済機構」が行なうため、ある意味安心です。
また、掛金は事業主が選択すればいいだけですので、非常に分かりやすい制度です。

しかし、中退共には中小企業しか加入できないこと、退職金は企業からではなく、中退共から振り込まれる等デメリットもあります。
さらに、定年退職等の場合の上乗せ給付も出来ません。

③確定給付型年金の新設

やはり、運用利回りなどのリスクを背負っても、社員には退職金の支給額を約束したい、という場合には一般金融機関の確定給付型年金と契約するか、自社で積み立てる方法を取らざるを得ません。

しかし、確定給付型には必ず予定利回りが設定されますので、実際の利回りが予定よりも下回った場合には企業が約束した支給額との差額を負担しなければなりません。

上のように大きく3つの選択肢がありますが、特に中小企業の場合には、2の中退共の制度を中心に運用し、付加的に生保の養老保険等を利用した制度が現実的な選択かと思います。


3.設計の重要性について
 
今後は確定拠出型の年金に移管すべき、というのが私の考え方ですが、確定給付型の年金を継続する場合であっても、適格退職年金制度に加入していた企業は勿論のこと、この機に退職金制度の設計を見直してみてはいかがでしょうか?

特に、退職前の最終的な役職、もしくは資格を退職金の計算の基礎にしていた企業は将来、退職金の支払いが思いの他膨れ上がる可能性が極めて大きいと言えます。

①資格別ポイント制度の導入

この手法は既に主流になりつつあります。
最終資格等級ではなく、資格等級毎にポイントを設定し、入社から退職まで、それぞれの資格等級のポイントに、同じ等級での滞留年数を掛け合わせた合計ポイントで支給額が決定される方法です。
中退共の積立金も、各資格等級毎に月額掛金を設定することで運用されています。

②長期的なシュミレーションの実施

これが将来、経営を脅かさないための最も重要な作業となります。
   
現在の制度で継続した場合の個人別退職金の算出
非常に面倒な作業ですが、現制度において、在籍する全社員が今後平均的な昇格をして退職を迎えた場合の個人別退職金を算出します。
この計算の目的は、新しい制度にした場合における想定支給額との乖離を把握するためです。ちなみに、退職金制度のコンサルティングを行なっている社会保険労務士等はシュミレーション用のソフトを持っており、いつでも企業の要望に応えられるように準備しています。
最後に記述しますが、この乖離が大きければ対策を講じなければなりません。

新しい制度でのシュミレーション
例えば確定給付型年金を導入する場合であれば、資格別のポイント・ポイント単価によって長期的にどの程度経営への影響があり、かつ、新制度で計算した個人別退職金の支給想定額との程度の乖離があるのかを検証するために行ないます。

最終的には、長期的に経営を圧迫することがなく、社員への影響も最小限で済むような数値を落とし込むようにします。


4.社員との合意等について

全く新しく退職金を設計する場合は別にして、従来の退職金制度の支給レベルが下がることが想定される変更には、社員、組合の理解が無くては実現不可能です。
また、新しい制度を説明して、社員全員から合意書を受領する事も必要になります。

下記のポイントを参考にして下さい。

①新しい制度導入前の期間の計算は、旧制度での計算で算出。
つまり、2重の計算が必要になります。しかし、制度導入前の期間は導入前の計算を使うというのが最も社員の理解を得られやすいと言えます。
長期的には経営への負荷は減って行きますので、最も良い落とし所です。

②社員、組合への説明を怠らない。
特に組合(若しくは従業員代表)との相談は、常日頃から行なうことが肝要です。これは退職金制度の変更時に限りません。

③同意書の受領
新しい制度案に合意をする旨の合意書を入手します。
出来れば説明会等の最後にまとめて合意書を取るのが効果的でもあり、効率的です。
    
④就業規則の変更
就業規則(若しくは退職金規程等)の変更を行ないます。
変更後は、労働基準監督署へ届け出ます。



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